トレードで最も有名なテクニカル分析手法といえば移動平均線ですが、もっとも軽視されているのもまた移動平均線でしょう。
事実、移動平均線は不要だとか、いらない、はたまた意味ないといった意見まであります。
しかしながら、移動平均線を利用している人が多いのもまた事実です。
結論から申し上げますと、移動平均線不要論には賛成できません。
もちろんだからといって、テクニカル分析において移動平均線に固執する必要性は全くありませんし移動平均線をトレードで使わなくても全然問題ないです。
実際移動平均線を用いなくてもトレードで勝つことは十分にできます。
しかし、移動平均線を利用して勝てなかったから移動平均線が不要である、いらない、無意味だという主張には賛成できません。
なぜなら、そこには「勝てないのは移動平均線に問題がある。(その相場にて移動平均線を選択した自分には問題が無い。)」ということが暗に示されているからです。
今回は移動平均線不要論について詳しく見ていきます。
FXで移動平均線がいらない、無意味といわれる2つの理由
移動平均線不要論には大きく分けると次のように2つに分けられます。
・移動平均線を用いて実際にトレードしても勝てなかったから
・本質的な理由から移動平均線が不要だから
それぞれ見ていきましょう。
実際のトレードで移動平均線で勝てないからいらないという理由
移動平均線の理論どおり、3本の線を表示させてトレードすれば勝てる…。
そう考えて実際に試した大抵の人が負けていくのはおそらく事実でしょう。
そして勝てないから移動平均線は使えないのだと評価をしていくのです。
よくFXの初心者本などで言われるのは、ゴールデンクロスやデッドクロスがエントリーポイントで、ゴールデンクロスが来たら買いで、デッドクロスが来たら売りでエントリーすれば勝てるというものです。
しかし、実際の相場はそんなに単純ではありませんですし、相場ではダマシも随所に発生します。
そういった初心者本といった質の悪い情報を元にトレードしても、負けるのはある意味必然なのです。
本質的な理由からいらないといわれる理由
もう一つの移動平均線がいらない、意味ないといわれるのは、本質的な理由から移動平均線が不要というものです。
移動平均線はただの終値の平均値であり、それ以上でもそれ以下でもないので、平均値という以外の意味は無い、つまり相場では無意味であるというものです。
移動平均線の主な使い方はトレンドを把握することですが、先にも述べたように移動平均線はあくまでも平均値であってトレンドそのものではない、そもそもトレンドだけを把握するだけならローソク足だけで充分であり、移動平均線を利用する意味がないという主張です。
実際、移動平均線を利用すれば多くのダマシがでてきます。
移動平均線のみを参照した自動売買などを利用して機械的にトレードするバックテストを行うと、徐々に負けていくから移動平均線はいらない、無意味であるという主張です。
こちらの移動平均線不要論の主張は、一見かなり的を射ているように見えてかなり乱暴な主張です。
移動平均線を使って勝てないのは移動平均線が悪いのか?
万能なインジケーターはそもそも存在し無い
まず始めに認識しなくてはいけないのは世の中に万能なインジケーターというものは存在しません。
どのインジケーターにも弱点があり、逆に得意なこともあります。
さらに言えば、トレンド系のインジケーターだけを使うのではなくトレンド系とオシレーター系の両方を組み合わせて使うのが定石です。
にもかかわらず、移動平均線を使って勝てないからといって聖杯探しをするのは、たとえ勝てるようなインジケーターを見つけたとしても相場環境が変われば負けるのは必然です。
移動平均線が無理だからといってMACDに飛びついているようでは、たとえいっとき勝てたとしても次第にまけていくでしょう。
そもそも、MACDは移動平均線を利用しているインジケーターなので、移動平均線が真に使えない、意味の無いものであればMACDもまた意味のない、いらないものだといえますしね。
あるべき姿は相場の環境認識をして、その相場に応じて適切な道具を使い分けていくべきなのです。
多くの人はテクニカル分析やインジケーターありきで物事を考え、取引をして負けていきます。
これがいかにおかしい事か分かりやすく乗り物で例えてみましょう。
隣町まで移動する手段(道具)として適切なのは何でしょうか?
車か電車といったところでしょうか?
では東京から北海道まで移動するのであればどうでしょうか?
車や電車でも行けなくはないですが効率的に行けるとはいえません。
飛行機がベストチョイスでしょう。
では逆に徒歩3分のところに行くのには何の道具を使うべきでしょうか?
自転車か、あるいはそのまま徒歩(道具は使わない)が適切です。
では徒歩3分の場所に移動するために飛行機をつかってみたらどうでしょうか?
うまくいかない、時間と金の無駄となります。
ようはそういうことです。
移動平均線には移動平均線の特徴があり、得意なこと、苦手なことが存在します。
それを把握せずに徒歩が有効な環境で一生懸命に飛行機で移動しようとしても勝てるわけがないです。
そうではなくて、環境認識をして目的に応じて適切な道具を使い分ければトレードで優位性を築くことができるはずです。
インジケーターありきで取引をするのではなく相場の環境ありきで考えれば移動平均線が有効である相場、移動平均線で勝てる相場というのも存在します。
だからこそ、移動平均線で勝てないのは移動平均線そのものが悪いのではなく、
移動平均線が有効ではない相場環境で移動平均線を使うと判断した自分自身にあると考えるべきなのです。
そもそも、FXであれば通貨ペアごとに挙動は異なりますし、株であれば業種や個別株ごとに違った動きをします。
すべて違った挙動をするのに無理やりすべて同一の道具に落とし込んで成功させようとする方が無理があるのです。
だからこそ、その通貨ペアやら株やらに適切な道具を見つけ出したり、道具の設定を変更する必要があるのです。
そういったことをすべて無視して、テクニカル分析やインジケーターありきで物事を考え、取引をして負けていきます。
何事でもうまくいかない人の思考法:ゼロイチ思考
こういった人の思考の特徴は典型的なゼロイチ思考に陥ってしまっています。
成功するか失敗するか、このインジケーターは稼げるものなのか稼げないものなのか…などなど。
とはいえ、こういった思考に陥ってしまうのも無理はありません。
むしろ、普通の人であれば一つ一つの出来事に対して逐一深く考えたりしないので、こういった思考に陥ってしまう方が普通であるとも言えます。
事あるごとに、世の中で起きた事象にたいして深く考えていては脳がパンクしてしまいますからね。
実際、僕自身も昔はこの思考にとらわれていて苦しい思いをしたこともあります。
しかし、冷静に考えれば、成功と失敗の間にはもう少しすれば成功できる状態であったり、このままいけば失敗するがここで改善させていけばまだ成功できるであろう状態などなど、0か1か以外にも0.3や0.7といった状態があるのは当たり前なのです。
しかし、多くの人はそれに気が付いていないか、ゼロイチ思考の危険性そのものは知っていても現実でうまく立ち回ることができていないかなのです。
だから移動平均線は使えない、勝てない、無意味だとなってしまうのです。
本質的に言うと移動平均線は無意味である
ここからはもう一つの移動平均線不要論についてみていきましょう。
移動平均線はただの終値の平均値であり、それ以上でもそれ以下でもないので平均値という以外の意味は無い、つまり相場では無意味でいらないものであるというものです。
この主張は一見かなり的を得ていているようで、かなり乱暴で当てにならない主張です。
事実移動平均線以外でも、というかインジケーターを利用しなくてもおおよそのトレンドの把握はできます。
分足、時間足、日足、週足、月足とみていけば長期のトレンドも短期のトレンドもおおよそは見てわかります。
ローソク足が上昇傾向であれば上昇トレンドで、逆に下降傾向であれば下降トレンドです。
そもそも移動平均線とはローソク足の終値を平均したものなのですから、移動平均線を見なくともローソク足を見ればトレンドがわかるのはあたりまえでしょう。
そうなれば本質的には移動平均線は不要で無意味になるかもしれません。
しかし、それを言ったらどのインジケーターも同じことが言えます。
トレンド系のインジケーターは全てトレンドを表示させてるわけですからローソク足で判断すればよいのひとことで片づけられてしまいます。
そもそもなぜインジケーターを表示させるのかというとトレンドを視覚化させてトレードを補助するためです。
インジケーター不要でローソク足のみで完全に、正確にトレンドを把握して取引できるのであれば別に移動平均線に限らずインジケーターはなくてもかまいません。
実際、訳の分からないインジケーターを使って、しかも訳の分からない使い方で難しくこねくり回して挙句の果てに負けていくのであればインジケーターは無いほうがいいとも言えます。
しかし、トレードで長く安定的に稼いでいくのであればインジケーターはあった方が良いと思います。
先ほどの例で例えるのであれば、東京から北海道に行くのに別に乗り物に乗る必要はないといっているようなものです。
たとえ道具を使わなくとも徒歩と、海は水泳をすれば東京から北海道への移動不可能ではありません。
しかしだからといって飛行機や電車、車は無意味であるというのはかなり乱暴な主張です。
これらから、移動平均線不要論は間違っているといえます。
もちろん、トレードスタイルや相場環境によって使うべきインジケーターは異なるので、移動平均線を使わないという選択肢はかならずしも間違ってはいません。
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