投資に関心がある人であれば一度は移動平均線という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
移動平均線とは最も基本的なテクニカル分析の手法のひとつです。
最も基本的なテクニカル分析の手法ではありますが、移動平均線の種類、見方、使い方、設定方法などは多岐にわたります。
そして、最も基本的なテクニカル分析の手法だからこそ極めて大切です。
投資やトレードに限らず、どんな分野でも基本をおろそかにしてはうまくいきません。
小利口者ほど変に難しい方法や見ごたえのある、鮮やかな、見栄えのあるような応用技術に固執し失敗します。
逆にプロフェッショナルほど基本を大事にします。
例えばサッカーであれば、素人ほどいかに遠くに強く蹴れるか、強い豪快なシュートを打てるかなどの練習をしますし、それに憧れます。
しかし、プロ選手や本等に上手い人ほどボールを足元にピタリと止めたり、まっすっぐに直線に蹴ったり、さらに基本的なことになると体の重心の移動だったりと、派手さや応用技術よりも地味な基本技術が格段に上手いです。
なぜならそういった基本技術が勝つために本当に必要な技術だからなのです。
そしてこれはもちろん投資やトレードの世界でも同じです。
移動平均線はトレードや投資におけるテクニカル分析の基本です。
基本だからこそ、移動平均線をしっかりとマスターする必要があります。
移動平均線とはなにか?
移動平均線の定義
テクニカル分析にはトレンド系とオシレーター系がありますが、移動平均線はトレンド系のテクニカル分析の指標です。
これらの指標のことをインジケーターと呼びます。
トレンド系、オシレーター系のどちらにも数多くのインジケーターが存在します。
トレンド系は相場のトレンドがどうなっているのかを、オシレーター系はいつ売買すべきかというタイミングを表示するインジケーターです。
移動平均線には複数の種類がありますが、最も基礎的なものとして単純移動平均線(Simple Moving Average,SMA)についてみていきましょう。
単純移動平均線の定義はある一定期間N日(自分で設定可能)における終値の平均値を表し、それをつなぎ合わせて線状のグラフにしたものです。
従って、移動平均の値は次の通りとなります。
(D1+D2+D3+D4+…+DN)/N
N…自分で設定した期間の日数 DN…N日目の終値
なぜ定義から確認する必要があるのか?
FX初心者向けの本などでは移動平均線だけでなくインジケーターの話となるとすぐにゴールデンクロスがどうだとかのテクニック論的な話になりますが、残念ながらそもそも移動平均線やそのインジケーターが何を表すのか、その定義はどうなっているのかについて詳しく解説されているFX初心者本というものを見たことがありません。
あるいは書かれていたとしてもそれほど重きは置かれていないでしょう。
自分が表示しているインジケーターが真に何を表しているのかを理解していなければ本当の意味で相場状況を理解できていないといえますし、何より道具を本当の意味で使いこなせていないといえるでしょう。
道具を100%利用できていなければ宝の持ち腐れです。
移動平均線を使うにせよ、使わないにせよ、自分が使うインジケーターの定義やら詳細、使い勝手などを覚えておくのは本来必須事項ですが、残念ながらこういった基本事項ができていなく、ただインジケーターが反応したからエントリーするといった人が非常に多いのが現実です。
そして、そこがライバルと差をつけれるところでもあります。
トレーダーはみな同じチャートを見ています。
しかし全く同じチャートを見ていたとしても、考えていること、受け取ったことは千差万別です。
だからこそ、テクニカル分析が大切なのです。
だからこそ、ファンダメンタルズ分析よりもテクニカル分析が個人投資家にとって有効なのです。
ファンダメンタルズでは、例えばFOMCやFRBの議長の発言、中央銀行の金利変更などのニュースから得られることは常に1つです。
余程勉強不足でない限り、みな同じことを考え同じことを受け止めるでしょう。
しかし、チャート図はファンダメンタルズのニュースや統計情報よりもはるかに抽象的で、それでいてトレーダーによって使っているインジケーターも異なります。
つまり、受け止め方はたとえプロであってもばらつきがあるのです。
チャートからきちんと正しい情報を受け取って正しい判断をしたトレーダーのみが生き残っていく世界が金融マーケットです。
だからこそ抽象的なチャート図から正しい情報を受け止めるためにも、移動平均線もきちんと定義から頭に入れておく必要があるのです。
移動平均線の見方
移動平均線を使って分かる事
移動平均線の定義はある一定期間N日における終値の平均値を表し、それをつなぎ合わせて線状のグラフにしたものと説明しました。
この移動平均線は一体何を表しているのでしょうか?
移動平均線はトレンド系のインジケーターなので、当然トレンドが現状どうなっているのかを表示します。
移動平均線が上向きで推移しているのであればN日間において上昇トレンド、下向きで推移しているのであればN日間において下降トレンドであることを表示しています。
線の傾きがトレンドの強さを示しています。
基本的にマーケットではトレンドの方向に従って動きます。
従ってトレンドに抗うことなくトレードしていけば、理論上はトレンドの転換点以外では負けにくい、高い勝率を維持できるといえるでしょう。
だからこそトレンドを把握することが大切となってくるのですが、移動平均線を使うことでそのトレンドの方向感と強さを任意の期間で表示することができます。
チャートは小さな上下の波を繰り返して移動していきますが、トレンドを把握できていれば小さな波の上下で一喜一憂することなく大局的な視点で動く方向感をつかむことができるのです。
複数の移動平均線を使って分かること
実際にトレードをする際に移動平均線を使う場合は、複数の移動平均線を組み合わせて使います。
というのも1本の移動平均線では、移動平均線が示す方向の予想通りに動かないダマシとよばれる現象が多く発生するからです。
例えばレンジ相場などでは1本の短期間の移動平均線ではどちらに動くのか、トレンドがどちらが優勢なのかを判断するのが難しいです。
しかし、期間の異なる、比較的長期間の移動平均線をみることで、長期間で見てどちらのトレンドが優勢なのかを判断することができます。
このように、複数の移動平均線を同時に表示させてテクニカル分析をすることで、1本の移動平均線ではわからなかったトレンドが見えてくるようになります。
ゴールデンクロスとデッドクロスだけを見てはいけない
実際にトレードする際は複数の期間の異なる移動平均線を表示すると説明しました。
その複数の移動平均線を表示した際に短期間の移動平均線が長期間の移動平均線を下から上へとクロスする場所をゴールデンクロスといい、短期間の移動平均線が長期間の移動平均線を上から下へとクロスする場所をデッドクロスといいます。
一般的なFXの初心者本やらでは、このゴールデンクロスでは上昇トレンドとなっているので買い、デッドクロスでは下落トレンドとなっているので売りの売買タイミングであると説明されます。
これはある意味正しいのですが、大いに誤解を招く表現で不十分です。
だからFX初心者本とやらは本当におすすめできません。
というのも、実際の相場ではゴールデンクロスが着た後にすぐにデッドクロスが来たり、デッドクロスがきた後にすぐにゴールデンクロスが出ることも多々あります。
こうした場合に仮にエントリーしてしまった場合は損切りするのが正しいのですが、これがおこる本質的な原因はゴールデンクロスやデッドクロスに固執しすぎだからです。
もっと言うと、ゴールデンクロスやデッドクロスしか見てないからです。
本来あるべき最善策は、そもそもゴールデンクロスの後にすぐデッドクロスが来るようなところでエントリーしないことです。
FX初心者本やら信頼に値するかどうか怪しい動画などで勉強すると、ゴールデンクロス=買い、デッドクロス=売りと覚えてそれ以上のことを見ようとしません。
しかし、本来移動平均線を複数表示させるのはゴールデンクロスやデッドクロスを表示させるためではありません。
期間の異なる移動平均線を表示して、長期や短期のトレンドを把握してダマシを排除するのが目的です。
盲目的にゴールデンクロス=買いやデッドクロス=売りをやっていては、ゴールデンクロスやデッドクロスのダマシにやられるのがオチです。
ではどうすればよいでしょうか?
トレンドが強い状況であればゴールデンクロスの後にすぐにデッドクロス来るという状況はそうそうないはずです。
逆にトレンドが弱い状況であればゴールデンクロスやデッドクロスによるダマシが来る可能性があります。
ではトレンドが強い状況、弱い状況とはどういう状況のことでしょうか?
トレンドの強弱は移動平均線の傾きやローソク足で判断できます。
そもそも上昇トレンドとは高値更新が連続している状態、下降トレンドは安値更新が連続している状態です。
これはローソク足の動きから判断することができます。
そして移動平均線は終値の平均値であることから、ローソク足の動きを見ていれば移動平均線が更新される前に次の移動平均線の動きを予測することも可能です。
移動平均線の次の動きを予測することができればダマシかどうかについて早期に判断することが可能となるでしょう。
最後に、そもそもテクニカル分析は本来トレンド系とオシレーター系を相場状況に応じて組み合わせて使うのが定石です。
つまりオシレーター系のインジケーターを見ずにトレンド系の移動平均線のゴールデンクロスやデッドクロスだけでエントリーするかどうかを判断するのは間違っているとも言えます。
コメントを残す